「華麗なる大逆転」真実を語るか

By JUNICHIRO ZUSHI

3月4日、映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(原題:”The Big Short”)が日本で公開された。サブタイトルは、「ウォール街VSアウトロー これがリーマンショックの真実だ。」

 

米国の住宅バブル崩壊の中、住宅ローン証券化商品の値下がりに賭けて大もうけしたトレーダーたちの姿を描いた映画ということらしい。あのブラッド・ピットも伝説のトレーダー役として出演している。果たして派手なアクションも、目も眩むようなCGにも無縁な「金融・経済危機」が映画の題材になるのだろうか。

 

「リーマンショック」といえば、“100年に一度”の未曾有の危機、その前後で世の中が一変した事件として一般認識されている。2006年の後半頃から話題になっていた米国のSub-Primeローン市場の崩壊を機に、強烈な資産デフレが起こり、2008年9月15日(月)に、耐え切れなくなったリーマン・ブラザーズはチャプター・イレブン(連邦倒産法第11条)の適用を連邦裁判所に申請し、経営破綻した。続く大手保険会社AIGの破綻、これにフィニッシュブローを加えたのが、米下院の金融安定化法案の否決であった(同年9月29日)。

 

更には2009年6月1日、ゼネラル・モーターズ(GM)がチャプター・イレブンの適用を申請した。「リーマンショック」は、これら一連の金融・経済危機を招いた大元凶というイメージで共有されている。

 

 

ところで、映画公開に関連した記事を見ると、この「リーマンショック」なる言葉はどこにも見当たらない。監督のアダム・マッケイも、Wall Street Journal(“WSJ”)のインタビューで一連の経済危機について”2007 Financial Crisis”(2007年の金融危機)という言葉を使っている。3月4日付けのWSJ紙も”Mortgage Bubble”(住宅バブル)の崩壊という表現のみで、リーマンの破綻について一切触れていない。

我々が「リーマンショック」と言っている100年に一度の危機は、世間では何と命名されているのか。

- The Great Recession (New York Times, Wall Street Journal, Economic Policy Institute, etc. )

- The Recession of 2007 – 2009 (U.S. Bureau of Lbor Statistics)

 

ちなみにGoogleで、"lehman shock"を検索してみると、ヒットした件数は僅か(当然ながらというべきか)40,000件程度に過ぎなかった。

 

 

リーマンブラザースの破綻は、欧米メディアに共通の認識としては大恐慌の一つの現象であったとするのが、どうやら邦題の「真実」に近いようだ。

 


図師純一郎、東京都出身。UCSB (カリフォルニア大学サンタバーバラ校)にてMaster of Arts (MA) in Political Scienceを取得後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行。海外の現場で現地企業取引を中心に第一線の業務を担当。外資系銀行に転じ、Vice Presidentに就任。その後も大学で教鞭を取るなど活動の幅を広げる。2015年にアレクシス株式会社を共同設立し、代表取締役CEOとして現在に至る。現場の「臨場感」のある本物のビジネス英語を、若いビジネスパーソンにやさしく伝えたい、という熱い思いは常に変わらない。