”around” に見る「ヘンな英会話」脱出のヒント

by Junichiro Zushi

私たちは、職場や普段の仕事の会話の中で、なにかのテーマについて話をしようとするときに、「~に関していえば」「~について考えると」とか「~についてですが」という言い回しを頻繁に使っています。

 

ビジネス英語で、これらの表現を英語に置き換える場面では、驚くほど多くの日本人が、in relation to~、とかwith regard to~とかのいいまわしを、いわば、「鉄板フレーズ」として使います。

 

photo:  Teddy KwokTwo Business Men

 

 

日本人英語については、ここがヘンとか、ここがおかしいとか指摘を受けることが多いのですが、「~に関して」については、この日本人英語の特徴を示している代表選手の一つかもしれません。

実は、「~に関して」の類似表現を英語でおきかえると、こんなにたくさんあります。

  • Regarding ~
  • Concerning ~
  • With regard to ~
  • In relation to ~
  • In respect of ~
  • In regard(s) to ~
  • In connection with ~
  • In association with ~
  • With reference to ~

 

ところが、実際のビジネスのシーンで、これらの表現を多用するネイティブはあまり見かけません。それどころか、日常のビジネス英会話でも、ほとんど使われていない、といってもいいかもしれません。

 

ちなみに、ALEXYSのファイナンス英会話の各コースは、ネイティブ・スピーカーで、現役のベテラン・インベストメント・バンカーが、実務で多用する表現をふんだんに盛り込んで作成したものですが、そこには上に列挙した「~に関して」に相当するフレーズは殆ど使われていません。

 

その代わりに、使われている単語が、中学で習う around です。

実際に、いくつかの英文の例をみてみましょう。

 

 

① Why is Bill asking questions around the Company’s reported sales and earnings?

   ビルは、なぜ会社が発表した売上と利益について質問をしているのですか。

 

② As a result, the Company’s strategy around software has started to witness green sprouts.

   その結果、会社のソフトウェア戦略が、(業績)回復の兆しをもたらしているようです。

 

③ What is AO&T’s background and experience around this type of project financing?

   この手のプロジェクト・ファイナンスに関するAO&Tの経験や実績はどうですか?

 

④ Because, there haven’t been too many project financing around integrated casinos and resorts especially in Asia, none of the major law firms can say that they are the true leader in this space.

   カジノ・リゾート統合型のプロジェクト・ファイナンスは、特にアジアではあまり実例がないので、この分野で真のリーダーといえる法律事務所はありません。

 

⑤ The bank has precedents around this type of structure.

   銀行としてはこの手法の前例があるということですね。

 

⑥ How is IBD around this?

   これに関して投資銀行部門はどういう感触ですか?

 

 

いかがですか?

 

”around”を使用することでWith respect to ~のような堅苦しさのない、すっきりした文章に仕上がっています。

実際のビジネスの現場でも、「~に関して」という意味で、“around“を使いこなしている人に出会うと、この人は、自然で英語らしい英語を話せる人だな、と感じます。

 

実は、英語らしい英語を話すためのヒントは、このシンプルな“around“の使い方に隠されています。

日常生活で使われる数千の単語やフレーズを、努力して暗記して、100%対応する英単語やフレーズに置き換えることができるようになったとします。そのような状態の彼、または彼女の英語は、受験に合格したり、TOEICで高得点が取れるかもしれませんが、

自然で英語らしい英語に聞こえるか、と言えば、それは別の問題です。

 

むしろ、短く平易な言葉で、前後の単語との組み合わせで細かいニュアンスまでつたわるような、まさにその状況にぴったりはまるピースのような単語が下りてきたとき、ああ、英語らしい英語だな・・と感じるのではないでしょうか。複雑なコミュニケーションが要求されるようなビジネスの場面ほど、簡潔で、細かいニュアンスが伝わり、会話の流れを止めない自然なフレーズを使いたい、と強く感じます。そのような英語を話せるようになることは理想ではありますが、即効薬はありません。日ごろから、それぞれのシーンにぴったりはまる単語やフレーズをキャッチするような自分なりのアンテナを立てて、小さく感動しながら自分なりの「ヘンな英会話脱出ノート」をつくってゆく工夫も大切です。

 

 

皆さんも日本語の「~に関して」に引きずられないよう“around”を上手く使いこなして、ぜひ、すっきり感のある表現を実践してみてください。


図師純一郎、東京都出身。UCSB (カリフォルニア大学サンタバーバラ校)にてMaster of Arts (MA) in Political Scienceを取得後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行。海外の現場で現地企業取引を中心に第一線の業務を担当。外資系銀行に転じ、Vice Presidentに就任。その後も大学で教鞭を取るなど活動の幅を広げる。2015年にアレクシス株式会社を共同設立し、代表取締役CEOとして現在に至る。現場の「臨場感」のある本物のビジネス英語を、若いビジネスパーソンにやさしく伝えたい、という熱い思いは常に変わらない。